かつては路地裏の噂話や一部の掲示板に留まっていた悪意が、なぜこれほど強大化したのか。その主因は、プラットフォームのアルゴリズムと過激化するキャンセル・カルチャーの結合にある。X(旧Twitter)やYouTubeなどのサービスは、ユーザーの滞在時間を引き延ばすため、怒りや義憤といった強い情動を呼び起こす投稿を優先的に拡散する設計を持つ。
ひとたび火種が投下されれば、アルゴリズムが燃料を注ぎ、数時間でトレンドの頂点へと押し上げる。文脈を切り取られた短い動画や扇情的なスクリーンショットが拡散され、瞬時に「絶対に許してはならない悪人」のフレームワークが完成するのだ。
欧米から波及したキャンセル・カルチャーは、不祥事を起こした著名人や企業の責任を追及する自浄作用としての側面を持っていた。しかし現実には、一度の失言や過去の過ちを一切許恕せず、関係各所へ執拗な抗議電話をかけ、仕事を奪い、社会的な息の根を止めるまで殴り続ける狂乱の装置として機能してしまっている。画面の向こうにいる生身の人間への想像力は、リポストや高評価の数字の前に跡形もなく蒸発する。