大岩亭を語るうえで絶対に外せないのが、店主である大岩武氏の圧倒的な存在感だ。麺の茹で上がりとともに厨房の空気が張り詰め、店主が全身のバネを使ってテボ(振りザル)を振り下ろす瞬間、静寂を切り裂いて咆哮が響き渡る。
「アァーーイッ!!」
一度聞けば耳から離れない独特の掛け声は、単なる客寄せのパフォーマンスではない。凄まじい重みを持つ濃厚スープに合わせる麺の水分を極限まで飛ばし、完璧な状態でスープと絡ませるための渾身の儀式なのだ。一日中、巨大な木べらで重い寸胴をかき混ぜ続け、腕や腰に凄まじい負荷がかかる過酷な作業。満身創痍になりながらも、大岩武氏は客の一杯のために自らの気迫を振り絞る。そのひたむきな姿に、カウンター越しで見守る客の胸は熱くなる。