エルムの名を持つ楡の木とは?花言葉や北海道の絶景、木材の真相に迫るの背景について、専門知識を詳しくお届けします。

北海道の風土と楡の木は切っても切り離せない関係にあります。その象徴として全国の写真愛好家や観光客を惹きつけてやまないのが、十勝管内・豊頃町の十勝川左岸河川敷に佇む「豊頃町ハルニレの木」です。

果てしなく広がる大草原の真ん中に、まるで絵画のようにポツリと立つその姿は、多くのカレンダーや広告の舞台となってきました。しかし、現地取材や町の保存記録を紐解くと、驚くべき事実が浮かび上がります。一見すると1本の雄大な大樹に見えるこのハルニレは、実は2本の木が寄り添い、長い歳月をかけて根元と幹が一体化した「合体木」なのです。推定樹齢は約150年。かつて度重なる十勝川の氾濫に耐え抜き、原野の開拓期にも伐採を免れて奇跡的に残されたその生命力は、見る者に圧倒的な感動を与えます。

もうひとつの聖地が、札幌市の中心部に広がる北海道大学札幌キャンパスの「北大エルムの森」です。前身である札幌農学校の開校(1876年)以前からこの地に自生していた原野の名残であり、ウィリアム・S・クラーク博士の教えを受け継ぐ学生たちを1世紀半にわたって見守り続けてきました。キャンパス内に点在するハルニレの巨木群は、推定樹齢300年を超える古木も含み、都市の真ん中にありながら原始の冷涼な森の気配を色濃く残しています。

楡の木の一般的な寿命は200年から300年程度とされますが、環境が保護された聖域では400〜500年以上に達する長寿個体も確認されています。豊頃町の木が氷点下20度を下回る過酷な十勝の冬を越え、北大のエルム群が2004年の巨大台風による倒木被害を乗り越えてひこばえ(新芽)から再生を遂げている現実は、樹木の持つ驚異的なレジリエンス(回復力)を物語っています。