現代の心理学において、欲望のメカニズムは脳科学や認知行動のアプローチと合流し、より具体的に解き明かされつつある。人間が何かに強く惹きつけられる瞬間、脳内では多幸感をもたらすドーパミンが分泌される。だが、エロスの本質は単なる快楽物質の発現にとどまらない。
人間の心は、不完全な自己を補完したいという根深い飢餓感を抱えている。承認欲求、自己実現の情熱、あるいは創作活動に向かうエネルギーの多くは、変形されたエロスのあらわれに他ならない。欲求が抑圧された時、それは芸術的表現や社会的な貢献へと置換(昇華)される。欲望とは自己を壊す危険を孕むと同時に、自己を更新するための不可欠なエンジンでもあるのだ。