なぜ「聞こえの悪さ」が脳の破壊に直結するのか。脳科学の研究によれば、その因果関係には主に3つのルートが存在する。第一に「認知負荷の過大化」だ。聞き取りにくい音を脳内でなんとか解読しようと過度なエネルギーを消費するため、記憶や思考といった高度な脳機能に回すリソースが枯渇してしまう。
第二に「脳実質の萎縮」である。加齢性難聴によって聴覚野への刺激が長期的に途絶えると、使われなくなった脳細胞のネットワークが物理的に縮小していく。そして第三に、アルツハイマー型認知症の病理的特徴であるアミロイドβなどの異常タンパク質の蓄積と、難聴による社会的孤立・抑うつ状態が複雑に絡み合い、脳の可塑性を急速に失わせていく点だ。