耳閉塞感のセルフケアとしてネット上で真っ先に紹介されるのが「耳抜き」です。確かに、耳管狭窄症による気圧調整の不良には有効です。しかし、「耳が詰まったらとにかく耳抜き」という単純な図式には大きな落とし穴があります。
第一に、前述のとおり耳管開放症では耳抜きが逆効果です。開放症は耳管が開きすぎている病気であり、耳抜きによってさらに耳管を開く行為は、症状の慢性化や悪化を招く恐れがあります。ネットの情報源の多くが「耳管狭窄症」を前提に書かれているため、開放症の人は誤ったセルフケアに陥りやすいのです。
第二に、激しい耳抜き(バルサルバ法)のやりすぎは中耳や内耳にダメージを与えるリスクがあります。強く鼻をつまんで息を吹き込む動作は、中耳の圧力を急激に上昇させ、内耳のリンパ液に悪影響を及ぼす可能性があります。実際、激しい耳抜きの後にめまいや耳鳴りが悪化したという報告は後を絶ちません。耳抜きは「軽く、ゆっくり、短時間」が鉄則です。
第三に、耳閉塞感の中には突発性難聴やメニエール病、聴神経腫瘍など、早急な治療が必要な疾患が隠れているケースもあります。特に「突然の耳閉塞感+めまい+難聴」が同時に現れた場合は、突発性難聴やメニエール病の初期症状の可能性があり、48時間以内の治療開始が聴力温存の分かれ目になります。「ストレスのせい」と自己判断せず、急性の発症や聴力低下を伴う場合は迷わず耳鼻科の緊急受診が必要です。
また、「病院に行っても異常なしと言われるから無駄」というネットの声もよく見かけますが、これは短絡的です。「異常なし」という診断は、器質的な重大疾患が否定されたという意味で極めて重要な情報です。その上で、ストレス・自律神経・顎関節・漢方など次のアプローチに進むことができます。「異常なし=放置していい」ではありません。「異常なし=別の角度から原因を探るスタート地点」なのです。