津市のうどんを巡っては、観光客と地元民の間でいくつかの認識ギャップが生じています。その最たるものが、「三重県のうどん=すべて柔らかい伊勢うどん」という思い込みです。
実際には、津市民が日常的に食べているうどんの半分以上は、一般的な関西風出汁のうどんや津市の讃岐うどん美味しい店で提供されるコシのある手打ち麺です。伊勢うどんは「名物として食べる特別な一杯」あるいは「幼少期から親しんだ郷土のソウルフード」としての位置づけであり、すべての店舗で伊勢うどんが主役として扱われているわけではありません。
また、「伊勢うどんは麺が伸びていてコシがないから美味しくない」というネット上の否定的な言説も、根本的な製法の誤認から生じています。本物の伊勢うどんは、単に茹ですぎた麺ではなく、極太麺の内部まで水分を行き渡らせることで「ふわふわでありながら中心部に独特のもっちり感を残す」高度な茹で分け技術によって作られています。質の低いチルド麺を短時間温め直しただけの代物と、熟練の職人が大釜で茹で上げた一杯とでは、全く別の料理と言えるほどのクオリティ差があります。