ハウルの魅力を完璧なものへと昇華させた最大の要因は、声優を務めた木村拓哉の演技に他ならない。キャスティングが発表された当初、世間には期待と不安が入り混じっていた。しかし、スクリーンから発せられたその第一声は、すべての疑問符を感嘆符へと変えた。
宮崎駿監督はハウルの声を「男前だが、どこか頼りなく、つかみどころのない男」とイメージしていた。木村拓哉のアフレコを聞いた瞬間、宮崎監督は「これだ」と直感し、収録は驚くほどのスピードで進行したという。作り込まれた演技ではなく、木村自身が持つ自然体のカリスマ性と繊細さが、ハウルのキャラクターに驚異的なリアリティを与えた。
低音で静かに語りかける「探したよ」という冒頭のフレーズから、ソフィーに対して甘えるような吐息交じりのセリフまで、音響的にも計算し尽くされたかのような声の響き。それこそが、何年経っても色褪せない「イケボ」の秘密である。