猛暑が列島を包んでいた第74回全国高等学校野球選手権大会の2回戦。超満員の阪神甲子園球場は、試合が進むにつれて異質な緊張感に包まれていきました。石川県代表の星稜高等学校と、高知県代表の明徳義塾高等学校による屈指の好カード。しかし、観客が期待していた「怪童」の豪快なアーチは、一度たりとも見ることができませんでした。
打席に立つ背番号「8」に対し、捕手は立ち上がり、ボールはことごとく外角へ大きく外れる。1打席、2打席ならず、3打席、4打席、そして終盤の第5打席までもが敬遠。カウントが進むたびにスタンドのどよめきは怒号へと変わり、試合終了のサイレンが鳴り響いた瞬間、球場全体から「帰れ! 帰れ!」の大合唱が巻き起こりました。NHK高校野球中継のマイクが拾ったその音声は、お茶の間の空気すら凍りつかせたのです。