稲荷崎高校が「最強の挑戦者」と呼ばれる最大の要因となったのが、宮兄弟による神業「双子速攻」です。春高バレー2回戦で対戦した烏野高校の日向翔陽・影山飛雄によるマイナステンポの変人速攻を、試合中にその場で目撃した宮兄弟は、即座に自らのプレーとして模倣・再現しました。
事前の綿密なサイン合わせや練習すらなく、初見の超高難度技を実戦で成功させた背景には、二人が幼少期から何千何万時間とボールを共有してきた感覚の共有があります。侑が繰り出すピンポイントのトスを治が最高到達点で叩き込む「双子速攻・正」にとどまらず、試合終盤には治がトスを上げ侑が飛び込む「双子速攻・裏」までをも完璧に成功させ、観客と対戦相手を戦慄させました。
しかし、この神業の裏には、日常茶飯事として繰り返された激しい衝突がありました。ファンの間で語り草となっているのが、宮兄弟の喧嘩の理由です。作中で描かれたエピソードを振り返ると、その発端は常に他愛のない日常の些細な出来事でした。
- 食べ物の恨み:好物のプリンや唐揚げ、最後の一個を勝手に食べた・食べられたという理由での取っ組み合い。
- トスの精度や判断への不満:練習中、少しでも気に入らないトスやスイングがあれば、容赦なく「クソツム」「カスサム」と罵り合い、体育館の床を転がり回る大喧嘩に発展。
稲荷崎高校の主将・北信介が「あいつらの喧嘩はいつものことやから止めんでええ」と淡々と見守っていたように、二人の喧嘩は破壊的な対立ではなく、互いの技術と感情を限界まで磨き上げるための「対話」そのものでした。相手に一切の遠慮をせず、妥協を許さない関係性があったからこそ、あの一瞬の判断が勝敗を分けるマイナステンポの速攻が成立したのです。