桐野文学の歴史を語る上で欠かせない金字塔、それが平凡な日常からの逸脱を描いた『OUT』であり、人間の嫉妬と醜悪さを描いた『グロテスク』だ。今作は、それら伝説的名作のDNAを色濃く継承しながら、より現代的なテーマへと昇華された本格的な社会派サスペンスとして君臨する。
格差、孤立、そして自己承認の病理。現代人が否応なく抱え込む孤独の深淵を直視する視線は、容赦がない。だが、その突き放した冷徹さの裏にこそ、圧倒的な人間讃歌と救済の問いかけが潜んでいる。旧来のミステリーファンはもちろん、重厚な人間ドラマを求める現代の読者にとっても、間違いなくエポックメイキングな作品となるだろう。