もっとも、ここに至るまでの道のりは決して平坦ではなかった。会社設立当初の数年間は資金繰りに奔走し、実験が失敗続きで共同創業者が去っていく夜もあったという。
大手メーカーからの圧力や、既存の供給網を守ろうとする業界団体からの冷ややかな視線に晒された時期もある。新しい技術が世に出ていく際、既存の利権構造と衝突するのは世の常だ。
「何度も諦めかけた。夜中の実験室で一人、分析機器のモーター音を聞きながら『自分のやっていることはただのエゴではないか』と自問自答した」と振り返る。それでも彼を突き動かしたのは、日本のものづくりが持つ底力をもう一度世界に証明したいという強い情熱だった。