劇中で描かれた彼の行動には、常に一貫した深い情念が宿っていた。かつて父が冤罪を着せられ、医局の権力闘争の犠牲となった過去。渡海が東城大学医学部附属病院にとどまり続けた最大の理由は、名誉を奪われた父の無実を証明し、心臓内に遺残されたペアンの真相を解き明かすことだった。
教授選の狂騒や欲望が渦巻く巨大組織の中で、彼はただ一人、患者の命と執刀の精度だけを基準に生きていた。復讐劇とも言える真実の暴露を果たした後、彼が静かに辞令を破り捨てて姿を消したのは、権力への無関心と、彼なりの「医師としてのケジメ」だったと言える。金や地位に未練を一切残さず、暗雲立ち込める病院を去った後ろ姿は、今なお語り継がれる名シーンである。