『春望』は、唐代を代表する詩人・杜甫が757年(至徳二載)の春、46歳の時に詠んだ五言律詩です。まずは全文の訓読、春望書き下し文、そして初学者でも情景が脳裏に浮かぶ現代語訳を連ごとに追っていきます。
【首聯(第1句・第2句)】
原文:國破山河在 城春草木深
書き下し文:国破れて山河在り、城春にして草木深し。
現代語訳:都・長安は反乱軍によって無残にも破壊され尽くしたが、大自然の山や河は何事もなかったかのように昔のまま残り、春を迎えた城内には、ただいたずらに草木が生い茂っている。
【頷聯(第3句・第4句)】
原文:感時花濺涙 恨別鳥驚心
書き下し文:時に感じては花にも涙を濺ぎ、別れを恨んでは鳥にも心を驚かす。
現代語訳(感時花にも涙を濺ぎの現代語訳):この荒れ果てた乱世の時勢に心を痛めては、美しく咲く花を見ても涙をこぼし、家族との生き別れを嘆いては、楽しげに鳴く鳥の声を聞いても胸を締め付けられ、ハッと怯えてしまう。
【頸聯(第5句・第6句)】
原文:烽火連三月 家書抵万金
書き下し文:烽火三月に連なり、家書万金に抵る。
現代語訳(家書万金に抵るの意味と解説):戦乱を知らせる合図ののろしは春の三か月にわたって燃え続け、離れ離れになった家族から届く一通の便りは、万金(莫大なお金)にも匹敵するほどかけがえのない価値を持っている。
【尾聯(第7句・第8句)】
原文:白頭掻更短 渾欲不勝簪
書き下し文:白頭掻けば更に短く、渾べて簪に勝へざらんと欲す。
現代語訳:心労のあまり白髪となった頭を掻けば、髪はさらに抜け落ちて短く薄くなり、もはや冠をとめるための簪(かんざし)さえ刺せないほどに衰え果ててしまった。