結婚間近と目されていた二人が別れを選んだ背景には、芸能界特有の過密日程だけではない、より根源的な価値観と環境の違いが存在していました。報道各社の取材記録や当時の関係者の証言を総合すると、渡辺正行と山口美江の破局理由には主に3つの要因が重なり合っていたことが浮かび上がってきます。
第1の要因は、互いに芸能生活の絶頂期にあったことによる深刻な時間的すれ違いです。週に何本ものレギュラー番組や特番収録、舞台出演を抱えていた渡辺さんと、キャスター業務からバラエティ、エッセイ執筆まで多岐にわたる仕事をこなしていた山口さんは、次第に私生活を共有する時間を確保することが困難になっていきました。
第2の要因は、結婚という制度に対するスタンスと将来設計のズレでした。家庭を築いて落ち着きたいという想いと、第一線の表現者として走り続けたいという葛藤が、二人の間に微妙な温度差を生んでいきます。
そして第3の、最も決定的な要因となったのが山口美江さんの家族への献身でした。早くに母親を亡くしていた山口さんは、男手一つで自身を育て上げてくれた実父・俊雄さんに対して並々ならぬ敬愛と責任感を抱いていました。当時から父親の健康状態を気遣い、家族との時間を何よりも優先させたいという彼女の強い意志と、芸能界の中心で慌ただしく生きる生活様式との間に生じた摩擦が、最終的に「別々の道を歩む」という苦渋の決断へと繋がったと伝えられています。