童話『桃太郎』の主役である桃太郎の直接的なモデルは、第7代孝霊天皇の皇子である吉備津彦命(きびつひこのみこと)です。古事記や日本書紀において、彼は四道将軍の一人として西道(山陽道方面)へ派遣され、強大な勢力を誇っていた古代吉備国を平定した武将として記録されています。
当時の吉備地方(現在の岡山県全域および広島県東部、香川県島嶼部など)は、大和朝廷に匹敵する強大な経済力と軍事力を持った独立勢力でした。その力の源泉泉流となっていたのが、豊かな農地と莫大な富を生み出す先進的な製鉄技術です。大和朝廷にとって、従順ではない吉備国の存在は王権を揺るがす最大の脅威であり、吉備津彦命の派遣は王権拡大のための冷酷な国家戦略でした。
後世に岡山県が桃太郎伝説の発祥の地として定着した背景には、この吉備平定の軍事作戦が神話化・伝説化され、民衆のあいだで「正義の勇者が悪を討つ物語」へと再構築されていった経緯があります。