渓谷の中心部に差しかかると、目の前を塞ぐかのように巨大な岩石群がそびえ立つ。なかでもひときわ存在感を放つのが「毘沙門岩」だ。太古の地殻変動と気の遠くなるような水蝕によって削り出されたその造形は、人間の手が及ばない自然の荒々しさを雄弁に物語る。岩肌に立つと、足元を激流が洗う轟音がダイレクトに鼓膜を揺らす。
そして、この絶景を特等席で眺められるのが「鳩ノ巣小橋」という木造風の吊り橋だ。歩くたびに微かに揺れる橋の上から見下ろす多摩川の姿は壮観そのもの。上流側の激しい白い泡立ちと、下流側に広がる静謐なエメラルドグリーンのコントラスト。視界全体が自然の原色に染まる感覚は、一度体験すると忘れられない強い記憶として残る。