なぜ、国民的番組の看板を背負う全メインキャストを同時に交代するという前代未聞の決断が下されたのか。その最大の理由は、旧声優陣の高齢化と大山のぶ代さん自身の健康問題、そして「作品を未来へ残すための自発的な勇退」にありました。
2000年代初頭、ドラえもん役の大山のぶ代さん、のび太役の小原乃梨子さん、スネ夫役の肝付兼太さん、ジャイアン役のたてかべ和也さんはいずれも60代後半から70代を迎えていました。しずか役の野村道子さんも含め、現場では長年「誰か1人でも欠けたら全員で一緒に交代しよう」という固い絆と申し合わせが存在していました。
さらに2001年、大山さんが直腸がんと脳梗塞を患い緊急入院。一時的に療養を余儀なくされた出来事は、制作陣とキャスト陣の双方に世代交代の現実を強く突きつけました。幸いにも復帰を果たした大山さんでしたが、「声がしっかりと出る元気なうちに、自らの手で次の世代へバトンを渡したい」と強く希望し、テレビ朝日に降板を申し出たことが決定打となりました。原作者である藤子・F・不二雄先生が1996年に他界された後も作品を守り続けてきたレジェンドたちが、作品の永遠の命を願って下した究極の英断でした。