取材に応じた野中徹博は、当時の過酷な葛藤を穏やかな表情で振り返る。中日を戦力外になった直後、ボールを握ることすら恐ろしかった夜があったという。知られざる未公開エピソードとして、台湾へ渡る直前に恩師からかけられた「お前の野球人生はまだ1イニングも終わっていない」という言葉が、折れかけた心を支えていたことを明かしてくれた。
「エリート街道から転落した時は、世間の目が痛くてたまらなかった。でも、台湾のグラウンドで泥まみれになった時、純粋に野球が好きだという原点に戻れたんです。野村監督に拾ってもらえたのも、ただ過去を悔やむのではなく、今日投げられる球をどう活かすかを考え抜いた結果だったと思います」。酸いも甘いも噛み分けた言葉には、過酷な勝負の世界を生き抜いた者にしか宿らない本物の重みが漂っている。