デフォルメされた愛らしい世界観の対極にあるのが、冷徹なまでの観察に基づく写実の極致だ。日本ボタニカルアート協会の展示やアーカイブを覗くと、同じ木の実でもクヌギ、コナラ、マテバシイといった樹種ごとの微細な構造差が克明に記録されている。
ボタニカルアートの真髄は、図鑑的な正確さと絵画的な陰影の調和にある。殻斗(かくと)の鱗片が重なり合うリズム、堅果の先端に残る花柱の跡、乾燥とともに生じる微細なひび割れ。単に「茶色い丸」を描くのではなく、生命が凝縮された小宇宙として植物の構造を捉え直す視線が、プロの描写に圧倒的な説得力を与えている。