東名高速の混雑を語る上で避けて通れないのが「大和トンネル」の存在です。車線を左右に増設してボトルネックの解消を図ったはずの現場で、なぜ今なお長大な車列が発生し続けるのでしょうか。取材班が道路工学の知見と現場観察から突き止めた要因は、ハードウェアの改良だけでは解決できないドライバーの生理現象と合流構造にありました。
第一の理由は、下り坂から上り坂へと地形が緩やかに変化する「サグ部」の存在です。トンネル手前でわずかな上り勾配(約1〜2%)に差し掛かると、ドライバー自身に減速の意図がなくても車両の速度が時速10〜15kmほど自然に低下します。後続車が車間距離を詰める恐怖心からブレーキランプを点灯させると、その減速信号が後方へ波及し、わずか数分で完全な停車状態へと連鎖していくのです。
第二の要因は、トンネルという閉塞空間が引き起こす視覚的心理です。壁面が迫る圧迫感から無意識にアクセルを緩めてしまう心理的ブレーキが働き、設計速度を保てない車両が多発します。
さらに現在、この状況に拍車をかけているのが海老名サービスエリア混雑状況との連動です。日本屈指の利用客数を誇る海老名SAでは、休日になると進入路から本線第1車線へ向けて数キロに及ぶ入場待ちの列が溢れ出します。SA利用を諦めて本線へ強引に復帰しようとする車両と、大和トンネル方面へ直進したい車両が激しく交錯し、織り込み交通による深刻な速度低下を引き起こしているのです。これが、大和トンネル渋滞理由の本質であり、車線を1本増やしただけでは解消し切れない複合的な原因といえます。