なぜ、高校では所得制限なしの授業料免除が実現したにもかかわらず、中学校では限定的な支援にとどまるのでしょうか。そこには、日本の法制度と教育行政が抱える「義務教育の原則」という構造的要因が横たわっています。
日本国憲法第26条において、義務教育は無償と定められています。すべての学齢児童・生徒には公立中学校という学費無償の受け皿が完全に用意されており、地方自治体は公教育の環境を整えることでその義務を果たしています。つまり、私立中学校への進学は「無償の公立教育があるにもかかわらず、独自のカリキュラムや環境を求めて家庭が任意で選択した教育」と法的に位置づけられるわけです。
一方の高校は義務教育ではなく高等教育への接続段階であるため、国や自治体による就学支援の法的根拠が異なります。公立中学が存在するなかで、あえて私立中学を選択した家庭に対して多額の公費を投じることには、納税者全体からの合意形成が極めて困難であるという政治的背景も大きく作用しています。