バケツの中身が空になっても、決して鍋を下げさせてはならない。そこにこそ、ムール貝料理の「真のクライマックス」が眠っているからだ。鍋底に残された濁りのあるスープには、何十個分もの貝のエキスと香味野菜、バターが極限まで凝縮されている。
まず試すべきは、添えられたカリカリのフリット(フライドポテト)や自家製バゲットをスープに浸す王道の食べ方。ポテトがスープを吸ってジュワッと旨味が広がる瞬間は至福そのものだ。さらに、知る人ぞ知る裏技として、残ったスープを厨房に戻し、リゾットや特製生パスタに仕立て直してくれるサービスを提供する店も増えている。米の一粒一粒、麺の一本一本が海の滋味を吸い尽くしたその一皿は、メインディッシュを凌駕するほどの破壊力を持つ。