『東京喰種』の関連楽曲が全編を通じて高い芸術性を保ち続けている背景には、原作者・石田スイ氏の卓越したキュレーション能力と音楽への異常なまでのこだわりが存在します。通常のアニメ制作におけるタイアップ選定とは異なり、本作では石田氏自身がインディーズシーンやオルタナティブロック界隈に深く精通し、自らのペンで直接アーティストへラブコールを送るケースが多々ありました。
その象徴的な事例が、第2期『東京喰種√A』のエンディングテーマを担当したamazarashiの「季節は次々死んでいく」と、第3期『東京喰種:re』オープニングを担当したCö shu Nie(コシュニエ)の「asphyxia」です。
amazarashiの秋田ひろむ氏が紡ぐ「拝啓 忌まわしき過去に 告ぐ 絶縁の詩」という強烈な言葉の連打は、理不尽な宿命を背負わされながらも生きることを諦めないカネキの生き様と完全にシンクロしました。肉を切り落とすように消費される生と死の無常観を、レーザーカッターで文字を刻むMVとともに表現した試みは、音楽ファンとアニメファンの双方に強烈な衝撃を与えました。
さらに、当時まだ全国的な知名度を得る前だったCö shu Nieを「asphyxia(窒息)」に抜擢した采配は、石田氏の審美眼の鋭さを業界に知らしめました。ジャズ、マスロック、ピアノエレクトロニカが複雑に絡み合う難解なアンサンブルでありながら、一度聴いたら離れないキャッチーなメランコリーを同居させたサウンドは、佐々木琲世として記憶を失い、偽りの平穏の中で息苦しさを抱える青年の内面を見事に炙り出しています。