一方で、従来の「美文字=正義」という価値観に疑問を投げかける動きもある。SNS上では、あえて崩した文字やヘタウマなフォント風の手書き文字を「エモい」と評価するカルチャーが定着しつつある。均一で整った文字はフォントで代替できるため、個人の揺らぎや感情が滲み出る「汚い字」にこそ、人間味やアートとしての価値を見出す若者が増えているのだ。
「お手本通りの字はつまらない」と語るデザイナーの女性(24)は、自身のSNSで手書きの日記を公開し、多くのフォロワーを獲得している。彼女の文字は決して整ってはいないが、独特のリズムと温かみがある。美の基準が多様化する中で、悪筆という言葉自体が時代遅れになりつつあるのかもしれない。