省スペース化に役立つ圧縮袋ですが、すべての冬服に適しているわけではありません。特にダウンジャケットの圧縮がNGとされる最大の理由は、内部の羽毛(ダウンやフェザー)への物理的破壊にあります。掃除機などで限界まで空気を抜いて強い圧力をかけると、羽毛の中心にある硬い羽軸がポキポキと折れてしまいます。一度折れた羽毛は元の立体的な形状を取り戻せず、空気の層を抱え込む能力(フィルパワー)が劇的に低下し、本来の防寒性能が二度と戻りません。
さらに、ウールやカシミヤなどの天然毛で仕立てられたコートを圧縮袋に入れるデメリットも見逃せません。長期間強い圧力で繊維が押し潰されると、特有のなめらかな光沢やふんわりとした手触りが損なわれ、繊維同士が摩擦で固まるフェルト化を引き起こします。一度深く刻まれたシワは通常のアイロンがけでも伸びにくく、襟や肩パッドの立体構造が完全に崩れる原因になります。
そのほか、フェイクレザーや本革製品、毛足の長いファー素材、厚みのあるスーツ類も圧縮厳禁です。合皮は密閉空間で加水分解が加速して表面がボロボロに剥がれ落ちるリスクがあり、ファーは毛並みが潰れて修正不可能になります。圧縮袋を使って良いのは、基本的に中綿がポリエステル素材の日常着、スウェット類、綿・アクリル主体のカジュアルなニット類に限定するのが賢明です。