金剛力士像を包み込む南大門そのものも、日本建築史上きわめて特殊な価値を持つ建造物です。治承4年(1180年)、平重衡による南都焼討によって東大寺の伽藍の大部分は灰燼に帰しました。この未曾有の国難に際し、勧進職(総責任者)に任命されたのが当時61歳の俊乗坊重源でした。
入宋経験を持つ重源は、従来の日本の伝統建築(和様)とは根本的に異なる、中国・宋の最新技術を取り入れた合理的な建築様式「大仏様(天竺様)」を導入します。正治元年(1199年)に上棟された現在の南大門は、大仏殿が江戸時代に再建された際に一部和様化されたのに対し、鎌倉時代初期の大仏様建築がほぼ完全な形で現存する唯一の遺構です。
現地を訪れた際に絶対に見落としてはならない建築的鑑賞ポイントは以下の3点です。
1. 柱を貫く強靭な横木「通し貫(とおしぬき)」
大仏様の最大の特徴は、太い円柱に多数の穴を開け、水平方向に何本もの横木(貫)を貫通させて楔(くさび)で固定する構造です。壁を最小限に抑えながら強大な耐震性を誇り、高さ25メートルを超える巨門を800年以上支え続けています。
2. 柱から突き出すブラケット「挿肘木(さしひじき)」
従来の和様建築のように柱の上に組物を乗せるのではなく、柱そのものに直接穴を開けて肘木(ひじき)を幾重にも差し込み、軒先をダイナミックに支えています。下から見上げた時の無数の木組みが織りなす幾何学的な美しさは圧巻の一言です。
3. 天井を張らない「化粧屋根裏(けしょうやねうら)」
南大門の下に入り頭上を見上げると、天井板が一切張られておらず、屋根裏のダイナミックな骨組みがそのまま露出しています。構造そのものを装飾として見せるこの豪快さこそ、武士の時代が幕を開けた鎌倉初期の気風を今に伝える大仏様の真骨頂です。