世界屈指の規模を誇るエルミタージュ美術館を語る上で、女帝エカチェリーナ2世の存在を外すことはできない。1764年、ベルリンの実業家から大量の絵画を一括購入したことを皮切りに、彼女はヨーロッパ中の傑作を買い漁った。「隠れ家」を意味するフランス語から名付けられたエルミタージュは、皇帝が孤独を癒やし、自らの権勢を西欧列強に見せつけるための私的な小宇宙だったのだ。
その中核を成す冬宮殿は、イタリアの建築家ラストレッリが手掛けたロシア・バロック建築の最高峰だ。息を呑むほど壮麗な「大使の階段(ヨルダン階段)」を登り、白大理石と金泥で覆われた大広間を抜ける体験は、それ自体がひとつの劇的な芸術体験と言える。広大な宮殿内には、孔雀が時を告げる巨大なからくり時計「孔雀の時計」が鎮座するパヴィリオン・ホールなど、工芸美術の粋を集めた空間が無限に広がっている。