ドクターフィッシュの体験において、医学的に最も警戒すべきは水系感染症を引き起こす細菌類の存在です。
2018年には、米国の皮膚科専門誌『JAMA Dermatology』において、ドクターフィッシュの足湯を体験した20代女性の足の爪が根本から次々と剥がれ落ちる爪甲脱落症(そうこうだつらくしょう)の症例が報告され、皮膚科医の間で大きな話題となりました。魚による物理的な微小外傷と、水中の細菌感染が爪母(爪を作る組織)にダメージを与えたことが原因とみられています。
フィッシュセラピーの水槽内から検出される代表的な病原菌には、以下のようなものがあります。
・マイコバクテリウム・マリナム(Mycobacterium marinum):淡水・海水に生息し、微小な傷口から侵入して難治性の皮膚肉芽腫や潰瘍を引き起こす。
・エロモナス・ヒドロフィラ(Aeromonas hydrophila):魚類の常在菌であり、免疫力が低下している人に感染すると蜂窩織炎や敗血症などの重症感染症を誘発する。
・緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)や連鎖球菌:水回りに多く、傷口の化膿や毛嚢炎の原因となる。
健康な皮膚であれば角質層がバリアの役割を果たすため感染リスクはわずかですが、皮膚に微細な傷がある場合はこれらの菌が体内に侵入し、局所の腫れや強い痛みを引き起こすリスクが存在します。