ドクター中松氏の名を語る上で欠かせないのが、「フロッピーディスク」と「灯油ポンプ」の発明をめぐる議論です。世間では「本当に彼がゼロから生み出したのか?」という疑問が長年囁かれてきました。
まずフロッピーディスクに関して言えば、中松氏は1952年(昭和27年)に「積層番地式記録媒体」(レコードシート)の特許を出願し、1958年に登録されています。その後、米IBM社が8インチフロッピーディスクを開発して市場投入する際、中松氏が保有していた磁気記録関連の特許との抵触を避けるため、IBMと中松氏の間で特許のクロスライセンス契約(非係争契約)が結ばれました。IBM側が正式にライセンス料を支払った経緯があるため、彼が基本概念の先駆者として国際的に認められたのは紛れもない事実です。
一方、冬の定番アイテムである灯油ポンプの原型となったのが、中松氏が学生時代に考案した「しょう油ちゅるちゅる」(サイフォン式ポンプ)です。凍える冬に母親が一升瓶から醤油を小分けする苦労を見かねて開発したもので、のちに燃料の給油器具として世界中に普及しました。製造権利を自ら独占せず広く開放したため、莫大な富を直接独占することはなかったものの、現代のインフラを支える大発明の原点となりました。