「調剤薬局は、病院で紙の処方箋をもらった人だけが入る場所」――そう信じ込んでいる生活者は今なお少なくありません。しかし、これは制度設計上も実務上も明確な誤解です。厚生労働省が策定した「患者のための薬局ビジョン」以降、調剤薬局には地域住民の「健康サポート拠点」としての機能が強く求められており、処方箋を持たずに健康相談や受診の相談で立ち寄ることは完全に正当な利用法です。
たとえば「数日前から胃の痛みが続いているが、市販薬で様子を見るべきか、すぐに消化器内科を受診すべきか迷っている」という状況を考えてみてください。調剤薬局の薬剤師は、患者の自覚症状や既往歴、現在服用中のサプリメントなどをヒアリングした上で、「この症状であれば市販のH2ブロッカーで2〜3日様子を見る選択肢もあるが、体重減少が見られるため専門医の精密検査を強く勧める」といった客観的な専門判断を下します。この「トリアージ(選別)機能」こそ、地域医療のパンクを防ぎ、重大な疾患の早期発見につながる調剤薬局の隠れた本領です。
さらに経済的な側面も見逃せません。調剤薬局で処方箋に基づいて調剤された医療用医薬品の自己負担分は、全額が確定申告時の医療費控除の対象となります(生計を一にする家族の合計が年間10万円、または総所得金額等の5%を超えた場合)。一方で、処方箋なしで調剤薬局やドラッグストアの店頭で購入した対象のOTC医薬品(スイッチOTC医薬品等)については、「セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)」の対象となり、年間の購入額が1万2000円を超えた部分について所得控除を受けられます。調剤薬局は、生活者が自分の体調と家計の双方にとって最適なアプローチを選ぶための「コンサルティング窓口」としても機能しているのです。