『SPY』は商業的にも凄まじい足跡を残した。オリコンシングルチャートで1位を獲得したのみならず、日本レコード協会によるミリオンセラー認定を受けるなど、90年代の音楽シーンを象徴するメガヒットとなった。だが、数字以上に特筆すべきは、その「毒」が大衆の日常に完全に溶け込んだ点にある。
誰もが口ずさめる親しみやすいフックを持ちながら、歌われている内容は尾行スリラーという二重構造。日曜の昼下がりのラジオから夜のドライブまで、あらゆるシチュエーションでこの曲が当たり前に鳴り響いていた事実こそが痛快だ。日本の大衆音楽が持っていた懐の深さと、異色のテーマをポップスに昇華させるクリエイティビティの勝利だった。