訪日外国人観光客が日本の電車に乗って最も驚くことの一つが、「静まり返った車内」と「通話に対する厳格なタブー視」です。海外の公共交通機関に目を向けると、日本とは全く異なる通話文化が広がっています。
アメリカやフランス、イタリア、あるいは東南アジア諸国の地下鉄や路線バスでは、移動中の通話は日常的な光景であり、スピーカーフォンやビデオ通話で大声で会話する乗客も珍しくありません。これらの国々では、公共交通機関は「誰もが自由に利用できる移動空間」と捉えられており、他人の会話を騒音として過度に咎めない大らかな文化が根底にあります。
ただし、欧米でも長距離列車などを中心に無制限に通話が許されているわけではありません。イギリスのナショナル・レールやフランスのTGV、ドイツのICEなどでは、通話や電子音を禁止した「静粛車両(クワイエット・ゾーン / Quiet Coach)」が明確に設定されており、静かに過ごしたい乗客と自由に話したい乗客のゾーニング(住み分け)が行われています。
日本のように「普通列車を含めた全車両・全座席で一律に通話を禁止する」というアプローチは、他者への迷惑を極力避けることを最優先とする日本特有の「ハイコンテクストな気配り文化」と「同調意識」の結晶であると言えます。