今井通子の名を語る上で外せないのが、登山史に刻まれた前人未到の記録です。東京女子医科大学を卒業後、眼科医として勤務しながら過酷なトレーニングを重ね、1967年にマッターホルン北壁の女性パーティー初登攀に成功しました。
その後も挑戦の手を緩めることなく、1969年にはグランド・ジョラス北壁、1971年にはアイガー北壁の直登ルートを完登。女性として世界初の「アルプス三大北壁完登」という金字塔を打ち立てました。当時は登山装備や気象情報も現代ほど発達しておらず、一歩間違えれば死に直結する氷壁を切り拓いた実績は、世界の岳界に大きな衝撃を与えました。
「医者と登山家の二刀流」と評されることも多い彼女ですが、極限状態での的確な判断力、自己管理能力、そして人間の生命力への飽くなき探求心は、双方の領域で互いに昇華し合っていたことが伺えます。