デフレスパイラルとは?物が安くても生活が苦しい理由と悪循環の真相について専門的な視点から解説いたします。専門家の見解をお届けします。

インターネット上の掲示板やSNSでは、今なお「インフレで生活が苦しくなるくらいなら、物が安かったデフレ時代の方がマシだった」という論調が散見されます。しかし、経済記者の視点から現場を取材し続けた立場として断言すれば、これは極めて危険な認知の歪みです。

第一の誤解は、「デフレ下では預金を持っているだけで資産価値が上がるから安全」という神話です。確かに現金の購買力は上がりますが、それは企業が倒産せず、自身が定年まで解雇されず、給料が維持されるという前提があって初めて成立します。デフレスパイラルが限界に達した社会では、正社員のポストが削られ、若年層の非正規化が進み、国家全体の税収不足から社会保障の給付カットと保険料引き上げが強行されます。預金の微々たる価値上昇など、一瞬で吹き飛ぶほどの雇用・生活リスクに晒されていたのがデフレの真相です。

第二の誤解は、「過度な価格競争は企業の経営努力であり、消費者が応援すべき正義」という思い込みです。適正な利益を削ったダンピング競争は、研究開発(R&D)投資の凍結と設備投資の先送りを招きます。その結果、日本企業はグローバルなIT・デジタル競争や脱炭素技術の開発で世界の後塵を拝することになりました。過剰な安売りは、巡り巡って国全体の産業競争力を枯渇させる「緩やかな自殺」に他ならなかったのです。