本作の核は、終末SFの皮を被った「小山門出と中川凰華の巨大な感情の物語」です。二人の結びつきは、一般的な友情という言葉では到底収まりません。
門出は一見すると物静かで真面目な少女ですが、内面には強い虚無感と破壊衝動を秘めています。一方のおんたんは、言動こそエキセントリックで破天荒ですが、その実、極めて理性的で他者への自己犠牲を厭わない深い愛情を持っています。
心理学的な観点から分析すると、二人の関係は「健全なバウンダリー(境界線)を超えた相互依存」でありながら、閉塞した世界において唯一機能する「究極の精神的シェルター」として描かれています。世界が滅びることよりも、お互いを失うことのほうが耐え難い。この極端な価値観は、かつて1990年代から2000年代初頭に隆盛を誇った「セカイ系」(主人公とヒロインの小さな人間関係が世界の命運に直結する構造)を、浅野いにおが2010〜2026年代の冷徹な現実感覚でアップデートした到達点と言えます。