巨大地震のニュース映像で、震源から数百キロメートルも離れた大都市の超高層ビルが、メトロノームのように左右へゆったりと、かつ激しく揺れ続けている様子を目にしたことがあるはずです。これをもたらすのが「長周期地震動」と呼ばれる現象です。
横揺れが異様なほど長く続く地震には、固有の震源特徴が存在します。南海トラフや日本海溝のような沈み込み帯で発生する連動型超巨大地震(マグニチュード8〜9クラス)では、断層の破壊長が100km〜500km以上にも及びます。破壊が完了するまでに数十秒から数分間を要するため、極めて周期の長い揺れ(1往復に数秒〜十数秒かかる波)が膨大に生み出されます。
短周期の小刻みな揺れは地盤の摩擦によって距離とともに急速に減衰しますが、長周期の波は減衰しにくく、驚くべき長距離を移動します。さらに、東京・中京・大阪といった大都市圏が広がる関東平野・濃尾平野・大阪平野は、強固な基盤岩の上に厚い堆積層が重なる「堆積盆地(たいせきぼんち)」の構造をしています。ここへ進入した長周期地震動は、ボウルに入ったゼリーのように盆地内部で反射・増幅を繰り返し、長時間にわたって閉じ込められます。
この長周期の波と、超高層建築物が持つ「固有周期」が一致した瞬間に生じるのが共振現象です。建物の固有周期はおおむね「地上階数×約0.1秒」と試算されます。つまり、30階建てのタワーマンションであれば約3秒、50階建てなら約5秒の波に共振します。共振が起きると、地上での揺れが震度3〜4程度であっても、上層階では震度6弱から6強に匹敵する猛烈な揺れへと増幅されます。最上階では左右に片振幅1メートル以上もしなり、キャスター付きの大型家具やピアノが凶器と化して部屋の端から端まで滑走する事態が発生します。
気象庁は2026年2月より、長周期地震動の影響度を視覚化する「長周期地震動階級」を緊急地震速報の発表基準に正式導入しました。階級1(室内のブラインドが揺れる)から階級4(固定していない家具の大半が移動・転倒し、立っていることができず這わないと動けない)までの4段階で評価され、巨大地震時には地上震度とは別に、タワーマンション上層階の致命的な揺れに対する即時警戒が呼びかけられています。