徳川宗家は歴史の大きな節目を迎えました。2026年1月、長年にわたり第18代当主を務めた徳川恒孝(つねなり)氏(元日本郵船副社長)から、長男の徳川家広(いえひろ)氏へと家督が継承され、約80年ぶりの代替わりとして国内外で大きく報道されました。
第19代当主となった徳川家広氏は1965年生まれ。慶應義塾大学経済学部を卒業後、米ミシガン大学大学院で経済学修士、コロンビア大学大学院で国際政治学修士号を取得した国際派のエリートです。国際連合食糧農業機関(FAO)のローマ本部勤務を経て、帰国後は翻訳家、政治経済評論家として数々の論壇で活躍してきました。名著の翻訳や国際政治に関する鋭い論考で知られ、ベトナム出身の夫人と共に国際色豊かな知的生活を築いています。
かつての将軍家当主というと、浮世離れした隠居生活を想像する読者も少なくありません。しかし、徳川家広氏の日常は驚くほど実務的かつ精力的なものです。公益財団法人徳川記念財団の理事長として所蔵史料の保存・展示を指揮する傍ら、家康ゆかりの静岡市など地方自治体と連携した観光・文化事業、講演活動、メディア出演に奔走しています。
徳川恒孝氏・家広氏が各種インタビューや自著で一貫して語っているのは、「徳川家は戦後、特権を失った一私人であり、普通の市民として自活してきた」という厳然たる事実です。葵の御紋という途方もない歴史的重圧を背負いながらも、特権意識に溺れることなく、自らの知性と労働によって社会に貢献する姿こそが、令和の徳川宗家の真実です。