「寒い日こそインナー、シャツ、厚手セーター、そしてダウン」と重ね着をする人が後を絶ちません。しかし、繊維構造の観点から見ると、この着こなしはダウン本来のポテンシャルを大きく殺してしまっています。なぜダウンの下は薄着のほうが暖かいのか、その核心は羽毛への体温伝導率にあります。
ダウンジャケットの内部に封入されているダウンボール(水鳥の胸毛)は、それ自体が発熱するわけではありません。人体から放射される体温(赤外線・伝導熱)を吸収し、羽毛が空気を抱え込んで膨らむことで、外気を遮断する分厚い空気の断熱層(デッドエア)を作り出します。つまり、ダウンが機能するための熱源は「着用者自身の体温」に他なりません。
ここに厚手のウールニットや目の詰まったフリースを挟んでしまうと、体温がダウン層に届く前に遮断されてしまいます。その結果、ダウンの羽毛が十分に温まらず、断熱層がうまく形成されないという逆転現象が起こります。テレビの検証番組や登山家のアウトドア実験でも、「極厚セーター+ダウン」より「素肌に近い薄手ロンT+ダウン」のほうが、衣服内の表面温度が約2℃〜3℃高く保たれることが実証されています。