正月の鏡餅やしめ飾りに橙が欠かせない存在となった背景には、植物としての非常に珍しい生態と、日本古来の言霊信仰が深く結びついています。
一般的な柑橘類は、冬に実が熟すと自然に枝から落下します。しかし橙は、冬に実が熟して黄色くなった後も木から落ちず、春から夏にかけて再び緑色に戻りながら2〜3年にわたって枝に留まり続けるという驚くべき特性(回青現象)を持っています。
この性質から、1本の木に「祖父母の代」「親の代」「子の代」の実が同時に共存する姿が見られます。この類まれな生命力が「家が絶えることなく代々栄え続ける」というイメージに重なり、子孫繁栄・家運隆盛を願う最高クラスの縁起物として正月飾りに据えられるようになりました。
言葉の響きである「代々(だいだい)」と果実の「橙(だいだい)」を掛け合わせた日本の伝統的な言葉遊び(吉祥の祈念)が、現代まで受け継がれる正月文化の根底に流れています。