SNSや大手コミュニティサイトの知恵袋などでは、同居家族が帯状疱疹と診断された瞬間の切迫した書き込みが日々繰り返されています。「夫が帯状疱疹になったが寝室は分けるべきか」「洗濯物は一緒に洗っても大丈夫なのか」「子どもと一緒にお風呂に入ってしまったが手遅れか」といった不安の数々は、感染経路に対する誤認から生じています。
水ぼうそうそのものは非常に感染力が強く、同じ空間にいるだけで吸い込んでしまう「空気感染(飛沫核感染)」を起こすことで知られます。しかし、通常の局所性帯状疱疹における主たる感染経路は、水疱の中の液体に直接手で触れたり、付着した衣類を介したりする「接触感染」です。病変が胸や腹部などの限られた部位に留まり、衣服や滅菌ガーゼでしっかりと覆われている状態であれば、空気中に大量のウイルスが飛散することは極めてまれです。したがって、インフルエンザや新型コロナウイルスのように「同じリビングに座っていただけで全員がうつる」という事態は基本的に起こりません。
家庭内でウイルスを媒介させてしまう最大の罠は、「入浴」と「タオルの共有」に潜んでいます。患部を保護せずにバスタブへ浸かると、水中に水疱液が漏れ出したり、浴槽のフチや風呂用の椅子に付着したりします。さらに危険なのがバスタオルの共用です。患者が患部を拭いたタオルには生きたウイルスが付着しており、その直後に抗体を持たない子どもが同じタオルで顔や身体を拭けば、皮膚や粘膜を通じてダイレクトに接触感染が成立してしまいます。
現場取材で見えてくるもう一つの落とし穴は、かゆみや痛みに耐えかねた患者本人が無意識に患部を掻き壊し、その手でドアノブ、冷蔵庫の取っ手、リモコンなどをベタベタと触ってしまう日常動作です。「患部を露出させない」「触ったら即座に流水と石鹸で手を洗う」「タオルは完全に個別化する」という物理的な遮断手順を徹底するだけで、家庭内感染の確率は劇的に低減できます。