大葉氏の運命を一変させたのは、2018年5月に発症した「急性硬膜下血腫」でした。報道各社の当時の取材データや医療関係者の知見を総合すると、この疾患は頭部への強い外傷や血管の破綻によって、脳を包む硬膜と脳表との間に急速に血液が溜まり、脳を強く圧迫する極めて危険な病態です。一般的な死亡率は50〜70%とも言われ、助かった場合でも重い後遺症が残るケースが珍しくありません。
大葉氏の場合、自宅内で突然倒れ、発見された時点で自発呼吸や意識のレベルが極めて低下した危険な状態でした。搬送先の病院ですぐさま頭蓋骨を開ける緊急減圧開頭手術が行われ、血腫の除去が試みられました。主治医からも「今夜が峠」と家族に告げられるほどの絶対絶命の危機でしたが、長年の過酷なスタントで培われた強靭な心肺機能と生命力が、奇跡的に死の淵からの生還を引き寄せました。
しかし、脳組織が受けたダメージは決して軽微ではありませんでした。術後は意識の混濁や高次脳機能障害、四肢の麻痺といった重い後遺症が残り、かつてスクリーンで軽やかに宙を舞った超人的な肉体は、自力歩行や自立歩行が困難な状態へと追い込まれることになりました。文字通りの「生命の危機」を乗り越えたという事実の重さこそが、世間に「大葉健二重体」「大葉健二死去」という誤ったセンセーショナリズムを植え付ける根源となってしまったのです。