SNSやインターネット掲示板では度々「座布団を投げると罰金50万円を徴収される」「即座に警察へ引き渡される」といった言説が拡散されます。しかし、日本相撲協会の公式発表や約款を調査した結果、「座布団投擲に対する定額50万円の罰金規定」というものは存在しません。
では、なぜこのような噂が定着したのでしょうか。その背景には、協会が掲げる観戦約款および日本国刑法に基づく実質的なリスクの存在があります。
日本相撲協会が定める「大相撲観戦契約約款」では、土俵や他の観客に向かって物を投げる行為を明確な禁止事項として規定しています。違反した場合は即座の退場処分や、今後の入場禁止措置が科される可能性があります。さらに、投げた座布団が他者に損害を与えた場合、以下の法的責任が発生します。
- 刑法第208条(暴行罪)・第204条(傷害罪):他人の身体に座布団を直撃させた場合、怪我の有無に応じて暴行罪や傷害罪が成立する可能性。
- 刑法第234条(威力業務妨害罪):取組の進行を妨げ、競技運営に著しい支障をきたした場合。
- 民事上の不法行為(民法第709条):前列の観客の眼鏡・カメラ・衣服を破損させたり、負傷させた場合の治療費・慰謝料等の損害賠償責任(これが数十万円規模に及ぶ事例が「罰金」と混同された要因)。
つまり、「一律50万円の罰金」という文言自体は俗説であるものの、実際に物を投げた当事者が背負う民事・刑事上のペナルティは極めて重いというのが現場の真実です。