過去の壊滅的な騒動を経て、支度部屋への通信機器の持ち込み禁止やコンプライアンス委員会の設置など、徹底的な監視体制が敷かれた。かつてのような組織的・金銭的な星の売買は根絶されたと公式には語られている。だが、制度が変わっても、人間が土俵に上がる以上「忖度」や「情」を完全に消し去ることはできるのか。
角界関係者からの極秘証言によると、十両から幕下に落ちれば給与が完全にゼロになるという過酷な身分制が残る限り、無言のプレッシャーは消えないという。引退間際の功労者や、怪我を抱えながら勝ち越しの一勝に生活を懸ける力士に対し、立ち合いの変化や無意識の緩みといった「情け相撲」が生じる余地は今もゼロではない。露骨な金銭のやり取りはなくとも、力士同士の貸し借りや人間関係の機微が、緊迫した瞬間に影を落とす可能性を関係者たちは口を揃えて指摘する。これが、現代の角界が抱える最も繊細で不可視のタブーなのだ。