小児の扁桃腺手術(扁桃肥大や無呼吸症候群の治療)は回復が早く、術後数日で元気に食事を摂る姿も珍しくありません。一方、成人が受ける大人の扁桃腺摘出手術は、耳鼻咽喉科の手術の中でも術後の疼痛が最も強い部類に数えられます。その最大の理由は、長年にわたる慢性的な炎症の繰り返しにあります。
成人患者の多くは、何年にもわたって扁桃炎を繰り返してきたため、口蓋扁桃とその奥にある筋肉(咽頭収縮筋)が強固に癒着しています。手術ではこの癒着をメスや電気メス、高周波メスなどでバリバリと剥離していくため、どうしても創面(傷口)が深く広くなります。さらに、喉の奥は剥き出しのまま縫合して塞ぐことが構造上難しく、傷口を自然治癒(肉芽形成)に任せる開放創となる点が痛みを長引かせる根本原因です。
手術当日は全身麻酔下で行われるため、術中の痛みや恐怖は一切ありません。手術時間自体は1〜2時間程度で終了し、麻酔から覚醒した直後は点滴の鎮痛剤が効いているため、意外にも「想像していたより耐えられる」と感じる患者が多い傾向にあります。
しかし、本当の試練は麻酔や強力な点滴薬が切れ、創面に白いかさぶた(白苔)が形成され始める術後3日目から7日目にかけての激痛ピークです。この時期は傷口の炎症が最大化し、喉だけでなく耳の奥まで突き抜けるような強い放散痛(関連痛)に襲われます。唾液を飲み込むことすら激痛を伴い、夜間に痛みで目が覚めるケースも日常茶飯事です。術後10日前後を過ぎると白苔が徐々に剥がれ落ち、新しい粘膜が再生して痛みの波は急速に落ち着いていきます。