第二部の主役を務めた村上弘明の佇まいもまた、忘れがたい。岩手県陸前高田市出身である村上にとって、奥州藤原氏の初代・藤原清衡を演じることは特別な運命を帯びていた。前九年・後三年の役という骨肉相食む地獄を生き延び、母や妻子の凄惨な死を乗り越えて「戦なき浄土」を平泉に築こうとした男の苦渋。村上の憂いを帯びた瞳と凛とした立ち姿は、傷だらけの理想主義者・清衡そのものだった。
清衡が中尊寺金色堂に込めた平和への祈りは、単なる美談ではない。身内を殺し、殺された者たちの血の海の上にしか立てなかった男の、魂の贖罪劇だ。村上弘明は劇的な叫びではなく、静かに耐え忍ぶ沈黙の芝居によって、東北の地に降り積もる悲哀を表現し切った。