大福帳(だいふくちょう)とは、日本の江戸時代から明治初期にかけて商人たちが使用していた主要な商業帳簿です。現在の会計用語でいえば「売掛金元帳(顧客ごとの取引記録)」に該当し、誰に、いつ、何を売り、いくら回収したのかを一元管理するために用いられました。
なぜ帳簿の名前に「大福」というめでたい言葉が冠されているのか、その語源や理由には諸説あります。最も有力なのは、表紙に「大福帳」や「大福帳萬事吉(大いに福が集まり、万事めでたく進む)」と墨書きすることで、商売繁盛と家名繁栄を願う吉祥祈願(縁起担ぎ)を込めたという説です。また、七福神の一柱である「大黒天」の神札を表紙裏に貼ったり、文字に因んだりした信仰的背景も指摘されています。
形状にも明確な特徴があります。縦長の和紙を二つ折りにし、上部を頑丈な「こより(紙縒り)」で綴じた縦長判の冊子で、腰からぶら下げて携帯しやすい実用的な設計が施されていました。表紙には店名や屋号、年号が記され、商家の「信用の証」として最も神聖視された帳簿でした。