不動産取引において、過去の事件や事故によって生じる嫌悪感を「心理的瑕疵」と呼ぶ。目に見える建物の歪みや雨漏りといった物理的欠陥と異なり、人の心に巣食う違和感の数値化は極めて難しい。それゆえに、内見時の違和感を敏感に察知するアンテナが必要となる。
見分けるポイントは空間の不自然な歪みにある。例えば、築年数の古い木造アパートで、一室の床や壁の一部だけが不自然に新調されているケース。あるいは、浴室の床タイルだけが真新しく張り替えられていたり、玄関ドアの郵便受け周辺に不自然な補修痕が残っていたりする部屋だ。相場より2割から3割ほど安い家賃設定や、「フリーレント3ヶ月」「定期借家契約1年」といった異常に好条件な募集形態も警戒信号と言える。
建物名が数年前に唐突に変更されている物件も少なくない。過去の凄惨な事件報道でマンション名が世間に知れ渡った際、ネット検索による特定を逃れるために名称を変更する手法は、業界内では公然の秘密だ。登記簿謄本を取り寄せ、過去の名称や所有権の移転履歴を確認する作業は、後悔しない部屋選びのための必須スキルとなりつつある。