陰陽道ブームが定着した現在でも、「安倍晴明=京都」という印象を抱く人は少なくありません。しかし、晴明の出自を語る上で欠かせないのが、古代豪族・阿倍氏の本拠地であった摂津国阿倍野(現在の大阪市阿倍野区)です。
社伝によると、安倍晴明は延喜21年(921年)にこの阿倍野の地で生まれたとされています。父は阿倍保名(あべのやすな)、母は葛の葉(くずのは)と呼ばれる白狐の化身であったという「葛の葉伝説」は、人形浄瑠璃や歌舞伎の演目『芦屋道満大内鑑』でも語り継がれる有名な物語です。晴明がこの世を去った2年後の寛弘4年(1007年)、一条天皇の命によって生誕の地であるこの地に社殿が建てられたのが、大阪・安倍晴明神社の起源とされています。
境内には、晴明誕生の際に用いられたと伝わる「安倍晴明公産湯之井の跡」や、葛の葉が我が子との別れを惜しんで歌を詠んだ情景を模した「葛の葉霊狐の飛来像」、堂々とした威厳を放つ「安倍晴明公像」が保存されており、単なる伝説にとどまらない地域の信仰と歴史の積み重ねを肌で感じ取ることができます。