後藤浩輝のベストレースを問われれば、多くのファンが2010年の安田記念を挙げるだろう。コンビを組んだのは伏兵ショウワモダン。決して前評判は高くなかったが、後藤の手綱さばきは神がかっていた。
降りしきる雨、重馬場の府中。インコースを果敢に突き、馬群の間を縫うようにして抜け出す勝負勘は圧巻の一言だった。ゴール板を駆け抜けた瞬間、全身で喜びを爆発させたド派手なガッツポーズ。あの瞬間、府中のスタンドが地鳴りのような歓声に包まれた光景は、中央競馬史に刻まれたハイライトの一つだ。
馬の力を信じ抜き、己の直感を研ぎ澄まして掴み取ったG1タイトル。ただ勝つだけでなく、見ている者の心を揺さぶる劇的な勝利を演出できる点こそ、彼が超一流の表現者たる所以だった。